ロジカル問題解決と洞察力
最近、あるメールマガジンを読んで気になったことがあります。
テーマは「ロジカル問題解決」では問題を解決できない、というセオリー(?)を事例とともに紹介したものでした。読んだ方もたくさんいらっしゃると思います。
概要を簡単にご紹介すると、『製品に自信のあるベンチャーIT企業の営業マネージャが、業界大手の企業にツテを頼って売り込みにこぎつける。担当にはウケはよかった。やっと会えた意思決定権者の部長に手練手管を尽くし製品を売り込む。話は弾んだ。では次回のアポをと伺うと、それは不要だと言われてしまう。言葉を失いながらも、その製品の必要性と導入後のメリットについてあらゆる点から説明し尽くす。
しかし、最後に先方の部長がその業務をIT化する意思がないという事実に行き着く』というものです。
この事例から『相手がロジカルでない時に、ロジカル問題解決は通用しない』というセオリーらしきものを導いていました。
このメルマガはプロジェクトを題材にしているものなので、結論は『プロジェクトで生じる問題には、担当の信念や価値観が深く関与している場合が多い。この種の問題はロジカルに解決できない』と結論を出していました。
皆様はどのようにお感じになりますか?
筆者はこの結論にかなり違和感を覚えました。ロジカルに解決できないものには対処法がない、という考えは思考停止を容認するということなのでしょうか。
火柱上がるプロジェクトで闘うPMやメンバーたちを顧客が論理的ではないという理由で見殺しにすることはできません。
そもそも信念や価値観には論理的要素がまったく含まれていないのでしょうか?
ある種のロジックの積み上げで信念や価値観が出来上がっていると筆者は考えます。
皆様もご存知の通り、ロジカル・シンキングはプロジェクトのあらゆるシーンで役立ちます。そして記事中のロジカルでは通用しない、という考えもロジカルに導き出されたものなのではないでしょうか。
この事例においては『洞察力』が欠けていたのだ、と筆者は考えます。
事例中の部長の信念はどのような成り立ちなのかをロジカルに洞察することで、その他の案件に通じる道が開けるのではないか、そう思いませんか?
プロジェクトを成功に導くための基礎力のうちの2つがこのロジカル・シンキングと洞察力です。そしてこれらの力はトレーニングによって後天的に獲得可能な力だと筆者は考えています。優秀なPMには天賦の才能に恵まれている(例えば常に明るく振る舞える性格など)方々が多いのですが、後天的に学べるものでもあります。後天的に学び、優秀なPMの行動を再現する、これが重要なのです。今回の洞察力はその代表的なものと言えます。