ドラッカー「ネクスト・ソサエティ」とアジャイル
少しばかり古いのですが2002年、ドラッカーが「ネクスト・ソサエティ」で言った「高度な競争社会」とは、知識社会ではあるが、知識だけでは生き残れない社会を指しているものだと読めます。
インターネットによって知識へ誰もが平等にアクセスできるようになりました。だからそこでは勝負は決まらなくなったのです。これはインターネットの素晴らしい側面と、社会を困難化させる側面との両面を一瞬にしてあらわにしたものです。
私たちIT事業者は労働集約型知識労働者です。その資本は、他ならぬ知識です。しかし、知識だけでは勝負にならない時代に突入し、「高度な競争」で生き残らなければなりません。
さて、どうしましょう?
勝負の場が知識だけでないならば、どこで勝負すれば勝てるのでしょうか?
経験、実績、人脈というネットワーク、品質、独自性、価格、複合知識、様々な戦場がありそうな気がします。そしかし、これらに正解はあるのでしょうか?
ドラッカーは次のように予測しています。
もはやいかなる産業、企業にも、独自の技術というものがありえなくなった。産業として必要とする知識が、馴染みのない異質の技術から生まれるようになった。
事業の発展は、企業の内部からではなく、他の組織や技術とのパートナーシップ、合弁、提携、少数株式参加、ノウハウ契約からもたらされるようになった。
ドラッカーはキーを創造する力とパートナリングと認識したようです。示唆に富んだ意見です。さらに深掘りするとパートナー協業を成功させるために必要なものは何でしょう?
ドラッカーはこうも言っています。
知識は瞬時に伝えられ、万人の手に渡る。その伝達の容易さとスピードが、企業、学校、病院、政府機関に対し、たとえ市場と活動はローカルであっても、競争力はグローバル・レベルにあるべきことを要求する。
これからの世の中は知識社会であり、しかもグローバル・レベルの質の高い知識が求められており、新たなパートナリングから生まれる新たな知識、が必要なのです。
そこで、筆者は速度が重要だという考えに至ります。
世に問う新たなサービスは瞬時に万人に評価され、生き残るか否が判断されるのです。
満を持した2年のプロジェクトで新サービスを作り出すのではリスクが高すぎて、ありえないことなのです。
そこで必要なことはPDCAを高速で回すこと、に尽きるのではないでしょうか。つまり、アジャイル。これはシステム構築だけを指す言葉ではありません。企業活動の基本がアジャイルでなければならない周辺環境が整いつつあります。
“アジャイルは経営判断”なのです。