エンタープライズ・アジャイルという挑戦

【イノベーションは単純化から】

 

“イノベーションに成功するには、焦点を絞り単純なものにしなければならない。
一つのことに集中しなければならない。さもなければ、焦点がぼける。単純でなければうまくいかない。新しいものは必ず問題を生じる。複雑だと、直すことも調整することもできない。成功したイノベーションは驚くほど単純である。まったくのところ、イノベーションに対する最高の賛辞は、「なぜ、自分には思いつかなかったか」である。”

  • ピータードラッカー「プロフェッショナルの条件」

 

単純化、集中化は複雑さを嫌うことにありますが、もっとも重要な意義は、速度を上げられることです。

 

【先頭を走ること】

 

現在の企業経営、特に日本において大切なことは、完璧を目指すよりも、少しでもベターな手を競合より先に打ち、その反応をみて、少しでもベターな状態に改善し、次の手を打つというサイクルを速くすることです。

 

もっとも重要なことは「先頭を走る」ことなのです。

 

二番手にはわずかなおこぼれ、三番手以降何もなし、がグローバルスタンダードな考え方です。

スピード感がなければ、勝ち抜いていけない。これが「グローバル化後、デジタル化以降の産業構造」のようです。多くの日本企業では”意思決定の遅さ“が弱点になっていると言われています。これは、意思決定ルートが、上層部の決定がなければ何も進められない「トップダウン方式」になっていることが大きく影響しているものと考えられます。しかも、社長の方針がまず常務会や役員会で表明され、役員が部長に伝え、部長が部下たちへ、と下に伝わるのに無駄な時間がかかります。伝言ゲームはニュアンスを変えるという危険もあります。これが典型的日本型意思決定のスピードです。これではグローバルでは勝てません。まずは意思決定の速度アップが必要です。

【超高速開発】

 

意思決定の次はオペレーションの高速化です。ここに大きなテーマがあります。IT抜きのビジネスは今日ではありえませんが、意思決定より時間を要する最大のネックがITの開発です。日本型の全てを完璧に計画し尽くしたりん議と同様のIT開発。細部まで仕様を詰めたウォータフォール開発が問題になります。

超高速開発が話題になっていますが、中身を見るとかなり危険な冒険だったりする現実があります。

ある生命保険会社では事業認可から営業開始までの7ヶ月でシステム開発をも行いました。業務フローの設計から始めたので大成功です。

しかし、この例は、ラッキーケースと言えます。仕様に不備が判明すれば手戻りが発生し、スケジュールは遅延、営業開始も遅延してしまったでしょう。こうした事態に陥らなかったデザイン能力には拍手を送りますが、リスクを背負いこんでいたことには感心できません。

 

【エンタープライズ・アジャイル】

 

従来のスクラム(= scrum。アジャイル開発の方法論のひとつ)が企業システムの開発者から受け入れられないのは理解できます。“ドキュメンテーションより動くコード”、というプラクティスが容認できないわけです。

 

しかし、ウォータフォールが時代の要請に合致しなくなりつつある現在、アジャイルを否定すると適切な技法を見出すことが困難です。

 

私たちにはチャレンジが必要なようです。

いわば“エンタープライズ・アジャイル”、を実践しながら、その手法を確立してゆく必要があるのです。

意思決定のスピードアップのために事業部門横断的プロジェクトチームによる次期DevOps型アジャイルへ挑戦する必要があるのです。

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